会社概要

COMPANY

代表メッセージ

代表挨拶

代表取締役社長 公文 裕巳

代表取締役社長
公文 裕巳

本日付けで、桃太郎源株式会社の公文 裕巳が研究担当取締役から代表取締役社長に就任いたしました。この機会に、ご挨拶をかねて会社のあゆみと今後の展開について簡潔にお示しさせていただきます。当面は、提示いたしました「再発膠芽腫に対する臨床第2相試験・多施設共同医師主導治験」が計画どおりに進展することに尽力して参ります。引き続き変わらぬご支援を御願い申し上げます。

1)桃太郎源社のあゆみ

桃太郎源社は、岡山大学で発見されたREIC遺伝子を活用して革新的がん医療を創出する目的で2007年8月17日に誕生しました。REIC遺伝子は、2000年に不死化細胞で発現が減弱する遺伝子として発見され、その後、多くのがん細胞で発現が減弱ないし消失しているがん抑制遺伝子であり、REIC遺伝子を発現するアデノウイルス(Ad-REIC)製剤を用いることで、固形がんに対して「がん細胞の選択的細胞死」と「抗がん免疫の活性化」の両者を誘導する「夢のがん治療遺伝子」として機能することが2005年までに明らかにされました。まさに岡山発の夢の遺伝子(桃太郎遺伝子)であり、遺伝子(Gene)を源と読むことで社名は桃太郎源株式会社になりました。リーマンショック後の不況の時代で投資環境は最悪でしたが、主に岡山の地元企業の多くの皆様からご支援を受けて、臨床用の第一世代GMP製剤(MTG101)を製造することが出来ました。その製剤を桃太郎源社から岡山大学に提供して、世界初の前立腺がんに対するAd-REIC遺伝子治療臨床研究(First-in-Human: HIM試験)が2011年1月から開始されました。この臨床研究において良好な成績が得られたことで、その後にJST(科学技術振興機構)からの資金援助を受けて、REIC遺伝子の発現を飛躍的に増強した第二世代GMP製剤(MTG201)を2013年に製造し、新規遺伝子治療薬の創製を目指して臨床治験を開始しました。2014年6月に杏林製薬株式会社からJSTの「産学共同実用化開発事業(NexTEP)」に応募した「悪性胸膜中皮腫を対象とする遺伝子治療用医薬品プログラム」が採択され、導入試験、臨床第1/2相試験、ならびに第2相試験が実施されました(後述)。その後、ベンチャーキャピタル等からの資金提供を受けて、日米で複数の固形がんに対する臨床治験を現在まで実施してきました。

2)Ad-REIC遺伝子治療のユニークな作用機序 (図1,2)

通常のアデノウイルス遺伝子治療では、目的のがん治療遺伝子から作られる機能的タンパク質により「がん細胞の選択的細胞死」ないし「抗がん免疫の活性化」のいずれかが誘導されて抗がん作用が発揮されます。一方、Ad-REIC遺伝子治療では、REICタンパク質が産生される過程で折り畳みの不十分な不良品REICが小胞体内に蓄積することでがん細胞選択的に小胞体ストレス死が誘導されます。近年、この小胞体ストレスによる細胞死は、抗がん免疫を最も強力に誘発する「免疫原性細胞死・ICD」であることが明らかとなり、Ad-REICの最大の特色がICDを誘導する作用であり、オプジーボ®(ニボルマブ)などの免疫チェックポイント阻害薬との併用による相乗効果に繋がることが実証されています。また、REICタンパク質が本来持っている種々の免疫調整機能やNK細胞の活性化メカニズムも解明され、抗がん免疫の活性化の全体像も明らかになっています。したがって、テーラーメイドの免疫遺伝子治療(がん免疫治療)の観点から、Ad-REICは、免疫原性細胞死により自己のがん細胞が発現する複数のがん抗原を効率よく免疫系に提示して、複数のがん抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導し、局所的ならびに全身的抗がん効果を発揮する「自己がんワクチン化療法」と位置付けることができます。

図1 Ad-REIC遺伝子治療のユニークな作用機序 図2 Ad-REIC遺伝子治療のユニークな作用機序

3)臨床開発の経過と総括 (図3)

第一世代のAd-REICを使用した最初の臨床研究は、A群:内分泌療法抵抗性進行前立腺がん、B群:再発ハイリスク限局性前立腺がんの2群で実施され、安全性:有害事象は一過性の発熱のみ、有効性:A群での遠隔転移病巣への抗腫瘍効果、B群での病理学的および直接的臨床的効果が確認され、Ad-REICの前立腺がんに対するPOC(創薬コンセプトの実証)が確立されました。特に、内分泌・化学療法抵抗性の多発リンパ節転移症例(推定予後10か月)に対して劇的な効果を発揮し、その後の長期の経過観察にて世界で初めての治癒を確認することが出来ました(治療後11年経過した現在も無治療で健在)。
第二世代製剤を用いた臨床治験は、米国で限局性前立腺がん、日米で悪性胸膜中皮腫、ならびに肝臓がんと悪性脳腫瘍(再発膠芽腫)に対しては医師主導臨床治験が岡山大学で実施されました。
悪性胸膜中皮腫に対する杏林製薬による臨床治験では、臨床第1/2相試験において胸水をともなう胸腔内への投与で極めて優れた臨床効果が確認されました。第2相試験においては試験開始直前の2018年8月に悪性胸膜中皮腫に対するオプジーボ®(抗PD-1抗体)の保険適応が承認された影響をうけ、オプジーボ®投与後の予後不良症例が初期10例中8例と多数組み入れられました。そのため、極めて遺憾でありましたが初期10例の成績不良により試験は無効中止となってしまいました。一方、米国での悪性胸膜中皮腫に対するベイラー医科大学での抗PD-1抗体との併用での臨床治験は、マウスでの動物実験でAd-REICと抗PD-1抗体(ニボルマブ)との併用で極めて顕著な相乗効果が認められ、第1相試験をスキップして第2相試験がFDAで認可されました。米国での治験の特殊性(遠隔地からの患者で長期の高額入院治療が困難)のため、Ad-REICの腫瘍内投与を最低限の4回に減少し、4週ごとのニボルマム投与は地元の病院で継続して実施するプロトコールとなりました。その結果、臨床効果としてはニボルマブ単独治療とほぼ同等の有効性を示す成績となりましたが、病理組織検査では投与部位局所で顕著な併用効果が確認され、安全性に関しても問題となる有害事象は認められませんでした。
また、肝臓がんと悪性脳腫瘍(再発膠芽腫)に対して岡山大学で医師主導治験が実施されました。肝臓がんでは、症例の集積に時間を要したため、最終用量での試験段階で途中中止となりました。しかし、主に肝臓で処理されるアデノウイルス製剤の肝機能障害例での使用上の注意点が明らかとなったこと、ならびに試験終了後に投与された免疫チェックポイント阻害薬が劇的な効果を示した症例を認め、肝臓がんに対するAd-REIC複合免疫療法の高いポテンシャルが示されました。一方、悪性脳腫瘍に対しては極めて予後不良である再発膠芽腫に対して、Ad-REICに起因する重篤な有害事象は許容の範囲内で、優れた有効性が示され、安全かつ有用な治療法となる可能性は高いことが示されました。
以上を総括すると、Ad-REICの安全性は高く、複数の固形がんに対して幅広く効果を示し、オプジーボ®などの免疫チェックポイント阻害薬との併用で高い相乗効果を示し、将来的には難治固形がんに対する新しい複合免疫療法として活用されることが期待されます。しかし、Ad-REICは、腫瘍内に局所投与するアデノウイルス製剤であり、標準治療薬無効で他に治療法のない多彩な進行がん症例を対象とする通常の臨床治験(比較試験を含む)による創薬の道は想像以上に困難であると考えられました。

図3 Ad-REIC製剤の臨床開発の経過と今後の展開

4)今後の展開

難治希少がんである膠芽腫において、再発病変に対する標準治療は確立されておらず、一般的な予後は6ヶ月でアンメット・ニーズが極めて高い病態と言えます。岡山大学での医師主導治験・臨床第1/2a相試験の成績(詳細は近く公表)から判断して、迅速に医師主導の臨床第2相試験を開始するのが現状では最良の選択と考えられ、2026年春からの開始を目指して試験計画、PMDA相談等が進められました。最終的に、治験責任医師である岡山大学病院脳神経外科田中將太教授から、Ad-REICの腫瘍内反復投与による有効性及び安全性を確認する非盲検非対照多施設共同試験、参加機関:岡山大学、国立がん研究センター、浜松医科大学、名古屋大学、京都大学で、症例数は27例、2年生存割合を主要評価項目として有効性および安全性を評価する医師主導治験として3月2日にPMDAへ治験届が提出されることになりました。

桃太郎源社としては、この第2相試験を全面的に支援して条件付き・期限付き承認を目指すとともに、コンパニオン診断薬の開発や膠芽腫に対する新しい併用療法の開発が岡山大学脳神経外科で大谷理浩研究准教授を中心に進展することを期待しています。また、Ad-REICの複合免疫療法の理想的ターゲットは超音波監視下に腫瘍内反復投与が比較的容易である肝臓がんであり、将来チャンスがあれば挑戦すべき課題であると考えられます。

                            

2026年3月1日